わたなべまこのこと

断面図をこよなく愛するわたなべまこのブログ

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

かんきつ だんめん図鑑、出ました!

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

かんきつ だんめん図鑑

こんにちは、わたなべ まこです。
この度、2020年10月28日にいちご だんめん図鑑、りんご だんめん図鑑に続く「だんめん図鑑」の3作目、かんきつ だんめん図鑑が無事に発売されました。


すでに手に取られた方からTwitterを経由して、推し柑橘のご報告を沢山頂いております。だんめん図鑑を通して皆さんと繋がっているんだなあ、と思うと本当に嬉しく思います。頑張って作った甲斐がありました(笑)。

いちご だんめん図鑑、りんご だんめん図鑑と同様に、今回のかんきつ だんめん図鑑についても、実際どんな風に作っていたのか?を皆さんにお届け出来たらな、と思うので過去に撮影した画像と共に制作の様子を振り返っていきたいと思います。

実はもっと発売時期が早かった?

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

なんと第1回の打ち合わせは2018年に行われていました

いちご だんめん図鑑は2018年6月15日、りんご だんめん図鑑は2019年10月10日に小学館より発売されています。そして、かんきつ だんめん図鑑は2020年10月28日。
こうしてみると、毎年1冊ずつバランスよく出てるなあ、って感じがしますが、実はこのかんきつ だんめん図鑑はもう少し早い時期に発売する予定でした。

なので、担当者さんとかんきつ だんめん図鑑について最初の打ち合わせを行ったのはなんと2018年!まだりんご だんめん図鑑の原稿にも取り掛かっていない時期なんです。
つまり、このペースだと撮影も原稿もその他の作業も、全てりんごとかんきつがかぶってしまう事になります。という訳で、完全に私の我儘だったんですけれど、1年に1冊ペースでズラして貰う事にしました。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

余談ですがここのフルーツパフェ、美味しかった!

この頃、まだ私は東京の卸売市場の中で働いていました。
本業がWebデザイナーなので、日々の業務は通販サイトの商品ページを制作する事がメインとなっています。Twitterの中の人も担当していましたが、どちらかというと隙間時間につぶやいているような感じで、沢山の方にRTやいいね!をされて、いわゆる「バズッた」という苺の断面図や桃の家系図なんかも、全て空き時間を使って作成したものでした。

いちご だんめん図鑑の時はとにかく発売までに時間がなかったので急がなくてはいけなかった…というのもあるのですが、ぶっちゃけ会社が終わってから、会社が休みの日も使って苺を集めたり撮影をしたり、原稿を書いたりしていたんですね。
りんご だんめん図鑑だけならいちごみたいになんとかなるかも知れないけれど、りんごとかんきつを同時進行で進めるのはさすがにパンクするだろう、と思ったので、それもあって発売時期をあえて遅らせて貰ったのです。

いちご だんめん図鑑には私のこだわりがギュッと詰まっています。
マニアックすぎる図鑑かも知れないけれど、万人受けするよりも「断面図」が刺さってくれる人にずっと長く愛読して貰いたい図鑑なので、他の図鑑にはないこだわりをとにかく詰め込みたかったのです。
その為には時間がやはり必要です。りんごとかんきつを同時進行で進めてしまうと、そのこだわりを詰め込むだけの時間が圧倒的に足りなくなります。

…という訳で、2018年から2019年にかけては、撮影だけはりんごとかんきつは同時進行で行いましたが(※スタジオ使用の作業効率化も兼ねて)、その後は私はりんご だんめん図鑑に集中し、りんご だんめん図鑑が発売されてからはかんきつにずっと集中していました。

どの柑橘を掲載するべきか悩む日々

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

 いちごもりんごもそうだったんですけど、まず「図鑑を作りましょう」となった時に、私から担当者さんに品種のリストを提出します。
担当者さんは本を作るスペシャリストではありますが、品種のプロではないからです。ズラズラと柑橘の品種名とその特徴を記載したリストをお渡しし、担当者さんがまたひとつひとつ調べて下さって、担当者さんの視点で「この品種を掲載すべき」というのをピックアップしてくれるという訳。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

柑橘の品種リスト(例)

これは私が個人的に作成している柑橘の品種リストです。
中には品種ではなく、ブランド名や商品名もありますし、品種ではなく分類も書いてあります。なんというか、覚え書きメモみたいな感じ。新品種の情報をキャッチした時も忘れないようにこのリストに日々書き込んでいるんです。
ちなみに苺や桃など、他のフルーツのリストも作成しています。

このリストをもとに、担当者さんに提出する用の新しいリストを作成しました。
かんきつ だんめん図鑑に掲載したい、掲載したら面白いと思う品種だけを記述したリストです。図鑑に掲載できる品種は42品種ですが、万が一、撮影ができなかった…などなど、掲載できなかった時の予備として、45~50品種ほどの候補をこの時点で挙げておきます。

そこに、先に記述した通り、担当者さんの意見も加わって最終的に「掲載したい柑橘の品種リスト」が完成するという訳。
このリストをもとに次は撮影に入るのですが、実際に50品種以上は撮影したんじゃないかなあ。また、同じ品種でもコンディションが悪かった場合は再撮影も行いました。
当然、この中にはボツになってしまった残念な柑橘も含まれている訳ですが、とりあえず撮影期間中はひたすら撮影に集中をします。使う・使わないは考えず、とにかく撮影、撮影です。

かんきつ だんめん図鑑 第1回目の撮影日

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

りんご だんめん図鑑も無事に発売できた翌年、つまり2019年に入ってから本格的に柑橘の撮影を開始しました。
実はその前にも目的の柑橘が手に入り次第、まめに撮影は行っていたのでトータルで1年ほどかけて撮影した事になります。本当に柑橘は1年を通して楽しめる果物なんだなあ…と改めて実感しました。

さて、いつも図鑑の撮影でお世話になっている小学館さん。
できるだけ撮影には立ち会いたいな、と思っていたので、仕事が休みの日なども活用し、参加できる日はできるだけ参加をして、どうしても無理な時は担当者さんに立ち会いをお願いし、なんとか50品種以上の柑橘の撮影を終える事ができました。
長かった…。りんごも長かったけど、かんきつはそれ以上かかりました。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

たまたまなんですけれど、この日は一番大きな撮影スタジオで柑橘を撮影して貰う事ができました。一応、ぼかしを入れておきますが広いでしょ?
普段はたぶん、人間のモデルさん達が撮影に使われる大きさのスタジオなんだと思います。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

ズラリと並ぶ柑橘類

スケジュールの都合もあるので、1回の撮影で10品種前後は揃えるようにして、一気に撮影を行っていきます。

柑橘の入手方法なんですが、卸売市場にいますのでまずは市場で調達をします。次に、どうしても市場では調達しにくい柑橘(ご当地性の高いもの)については、都内のアンテナショップを巡ったり、農家さんに連絡をして直接送って貰ったり、地道にスーパーや地方の道の駅をまわったりして、コツコツと揃えました。

これはいちごの時もりんごの時もそうだったんですけれど、市場でもやっぱり入手しにくい品種っていうのは存在するのです。
そんな時、Twitterを通して柑橘を譲って下さった農家さん達には本当に感謝しかありません。Twitterやっててよかった…と思う瞬間でもあります。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

この日のハイライトは晩白柚
リアルな話をしてしまうと、柑橘の中では1個あたりの単価が高いですし、限られた数しか用意していなかったのでカットするにも失敗が許されないのです。
腕力のない私に代わって勢いよくカットして下さった担当者さんに感謝(笑)。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

モデルさん並にお直しが入ります

無事に綺麗な断面図をゲットする事が出来ました~!
図鑑に使用している画像はほとんど修正は加えていません。紙印刷した時のために明るさの調整くらいはして貰う事はありましたが、加工は一切しない方針なので、撮影するこの時点で入念にチェックをする必要があるのです。

私が普段、個人で撮影している時にもやっている事なんですが、ティッシュ、綿棒、つまようじなどを駆使して、断面図のテカリをおさえたり、飛び出してしまった種を整えたり、汚れをふき取ったり、結構細かいお直しをしてるんですよ~。
だって一番カワイイ「断面図」を皆さんに見て貰いたいじゃないですか。

いちごやりんごも、それなりに苦労はありましたが、かんきつが一番大変だったかなあ。果汁が多いフルーツなので、テカリはおさえたいのだけれど、あんまりおさえてしまうと美味しそうな感じがなくなってしまうし、そのバランス調整が本当に難しかったです。何度も何度もモニターでチェックをしながら、担当者さんやカメラマンさんのアドバイスも頂きつつ、沢山写真を撮って貰いました。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第1回)

撮影のあとは、お楽しみの試食タイムです。
私は原稿を書くために食べておかないといけない、というのもあるんですけれど、第三者の意見や食べた感想も聞けるので、実はこの試食タイムは結構大切な時間なんです。

絶対この柑橘が人気あるんだろうなあ、というのが実はそうでもなかったり、新しい切り口で評価されたり、結構「気づき」があったりします。
今ってネットでちょっと調べればなんでも情報って出てくるじゃないですか。
例えば「紅まどんな」で検索すると、味や食感の感想、栽培方法や産地の情報などなど全ての情報が手に入るといっても過言ではありませんが、よく見るとどこのページにも同じような内容が書いてあったりして…。

せっかくなので、自分の言葉でその柑橘の品種について紹介したいなあって思いますし、そういう意味でもネット上の情報ではないリアルな感想ってやっぱり大切なんですよね。ゆるいディスカッションみたいな感じかな。

そんなこんなで第1回目の撮影は無事に終了しました。
つづく。