わたなべまこのこと

断面図をこよなく愛するわたなべまこのブログ

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

かんきつだんめん図鑑が出来るまで、第3回目です。
半年~1年弱もの長い時間をかけて柑橘の撮影を行い、その後は写真を見ながら最後の掲載する柑橘の選定、そして42品種の原稿を執筆していく訳なのですが…。

ふと思ったのですが、マジで柑橘の撮影を林檎と同時進行でやっておいてよかったなあ、って事。撮影してた頃は新型コロナウイルスなんていう言葉すら聞いた事もないような時期だったのでね。もし今年に入ってから撮影しましょー、なんて事になってたら、かんきつだんめん図鑑の発売は一体いつになっていたんだろうか…と思います。
別にコロナを想定して早めに撮影をしてた訳じゃないんですが、結果的にものすごく大変ではあったんだけど、早めに撮影をしておいて大正解でした!

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

撮影前に仮で決めておいた42品種のリストを元に、撮影画像の仕上がり具合や全体的なバランスなどを考慮して、最終的に掲載確定の42品種をここでガッツリ決めました。
バランスというのは、品種名・主な産地・色合い・その品種にまつわるエピソードなどのほか、原稿を書く前の下調べを行う段階でソースがきちんとハッキリしているかどうか、なども考慮し、担当者さんと相談して決めます。
これはいちごもりんごもそうでした。

例えばですが、個人の育種家さんが育てたオリジナル品種とか、世界でここだけしか栽培してません!みたいなマニアックすぎる品種の場合は、できるだけその本人=農家さんに話を聞くように心がけているのですが、なかなか連絡が取れなくて話が聞けなかった場合などは、残念ですけど掲載する候補から落とす事になります。
ネットで転がってる情報などを繋ぎ合わせて想像で書く事も出来ちゃうんですけど、一応「図鑑」なので、出来るだけ正しい情報を掲載したいからです。

なので、下調べはある程度ネットでも行いますが、最終的には書籍の情報や農家さんなどのお話しを元にきちんとソースを確認してから原稿を書くようにしてました。
これもねえ、コロナで大変だったな、と思うのは外出自粛期間はなかなか図書館にも行けなかった事です。閉館してたんだよねえ。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

すでにTwitterでもつぶやいてますが、今回のかんきつだんめん図鑑ではとにかく「色」にこだわったので、過去のいちごだんめん図鑑やりんごだんめん図鑑に比べて、カラフル具合はよりパワーアップしていると思います。
柑橘の画像はもちろんのこと、品種名の色も何パターンもデザイナーさんに案を出して貰って、見比べたりしたんです。これは一文字ずつ交互に色が異なるパターン。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

最終的には、橙色・黄色・緑色を交互にローテーションしていくというパターンに落ち着きました。なんとなくページをめくるたびにリズムがあって面白いかな、っていうのと、カラフルなんだけど目が疲れないというのがポイントです。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

撮影した柑橘の画像と、私が提出した原稿(何度も赤入れされて書き直して…を繰り返してます)を組み合わせて、デザイナーさんが図鑑に仕上げてくれます。
で、こういう見本の印刷紙みたいなのが何度も自宅に届くので、実際のサイズ感を確認してみたり、ここにまた赤入れをして返送したり、と、なかなかアナログなやり取りをずっと繰り返していました。
なんだかリモートワークをしているような気分でした(笑)。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

原稿もねえ、提出した時点ではいいんじゃない?と思っていた文章でも、実際に流し込んでみると「なんかテンポが悪いなあ」とか「意味がわからん」っていうのが実際に起きるんです、これが。不思議だよねえ。
あと、しつこいくらい誤字脱字をチェックしていても、ヤツらはなぜか私たちの目をすり抜けていくので(笑)最後の最後の最後まで、もう本当に気が抜けなかったです。
無いと思うけど、もし誤字脱字を見つけたらコッソリ教えて下さい。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

巻末の付録でおなじみ、分布図の軸について。
これも毎回、頭を悩ませています。いちごだんめん図鑑の時は私の我儘を通して貰ったんですが、出来るだけ味には言及したくないのです。何度も言ってますが、味覚は個人によって違いますし、このチャートは私の主観がどうしても入ってしまうものなので、あんまり味を決めつけたくないというか。

ただ、やっぱり喜ばれるのは味についてわかりやすい分布図だという事も理解はしてますので、甘い&酸っぱいのほかに、食べる時になんか役に立つ情報があるといいかなあ、という事で、皮を手で剥きやすいか剥きにくいか、に決めました。
他にもねえ、候補はいろいろあったんです。
単純に色でわけてグラデーション分布図にするとか、種が多いか少ないかにするとか。なので、もしお時間ある方、別の軸で分布図を作ってくれたら私が喜びます(笑)。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

そして、こちらの主な産地を記した地図も。
見やすさ重視なので、柑橘同士の空間というか隙間?の位置も細かく指定してます。こういう細かい作業、大好きなんです(笑)。
細かいと言えば、図鑑の本編はもちろんですが、この地図の中にある柑橘もサイズのバランスを実物のサイズに比例させているのです。例えばこの図鑑の中では晩白柚が一番大きくて、金柑が一番小さいのですが、晩白柚を10、金柑を1として10段階で42個の柑橘をサイズ分けしてます。なんかどこかの選果場のようですが(笑)。細かすぎて伝わらないかもですが、私なりのこだわりです。

そして地図のイラストなどは、いちごの時からずっとお世話になっている牧野 伊三夫さんが今回も担当して下さりました。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

わかるかな?デザイナーさんが細かく細かく調整して下さったおかげで、スッキリと見やすい地図になりました。嬉しい。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

こんな風に、地味~な作業を延々と繰り返して図鑑が出来上がっていきます。
原稿執筆開始からだいたい半年ちょいくらいかかったのかな?もちろん24時間やってる訳ではないんですけど、ほぼ毎日、図鑑の事を考えたり何かしら作業はしてました。
その柑橘に詳しい農家さんにお話しを聞かせて貰ったりとか、本当にその節はお世話になりました。

最終的に、実際に使用する紙に印刷をして貰ったものをチェックして、色の出かた(明るすぎるとか)まできちんと確認して、作業は全て終了です。
このあとは本物の(?)図鑑が出来上がるのを待つだけなので、その間に今度は告知を行ったり取材に応じたり、と、なんだかんだ発売日まで作業は続きます。

今回のかんきつだんめん図鑑については、本当に偶然ではありますが、コロナ禍だからこその進め方で出来上がった図鑑だな、っていう思いが強いですね。
もともと私が東京を離れる事もあり、以前は割と気軽に小学館さんに出向いたり担当者さんとも直接会って打ち合わせとかしていたのですが、「もうそういう事も出来なくなりますねえ」「でも今の時代はメールとかありますから」なんて話してたんですよね。でもそれが、東京とか地方とか関係なく、コロナ禍で一切できない状況に一時的ではありますがなってしまって。

図書館や本屋さんに出かけて調べる事が出来ない。
農家さんに直接会いに出かけてお話しを伺う事が出来ない。
参考として柑橘を気軽に買いに行く事が出来ない。
産地に行こうと思ってたのにそれが出来ない。

出来ない事がいっぱいあって、最初はものすごく戸惑いました。でも、こんな時期でも出来る事はやっていこう、と思ってほとんど自宅に引きこもり状態でしたが、ずっと調べものをしたり原稿を書いてました。
メールや電話はもちろん、郵便や宅配も活用して作業を進めていきました。先にも少し書きましたが、マジで撮影だけでも終わらせておいてよかった…と思いながら。今年まだ撮影してたら、完全にこのかんきつだんめん図鑑は出てなかったと思います。
こんな時期だからこそどうしても出したかったし、全国の農家さんを応援したいのはもちろんのこと、このコロナでちょっと気持ちが落ち込んじゃってるかな、っていう方でも気楽に読めて楽しめる1冊になってくれたらいいなあ、と思っています。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第3回)

まきポンのサインがカワイイ

最後に、ちょっと説明をさせてください。
いちごとりんごは「42品種」を掲載していますが、このかんきつだんめん図鑑に限っては厳密にいうと「42品種」ではありません。
品種名のほか、分類名というものが中には含まれています。例えば温州みかんは品種名ではなく、温州みかんという大きな分類というかグループの中に、更に細かい品種がいくつも存在するという感じです。

ここも、担当者さんとものすごく長い時間をかけて話し合いを重ねました。
いちごやりんごとの統一感を持たせるのであれば、分類名は違うんじゃないの?って。でも、みんなが知ってる柑橘はやっぱり掲載したいですし、そうすると、どうしても分類名だけどそれで掲載するしかないよね、みたいな柑橘も出て来てしまって…。
という訳で、ちょっと言い訳っぽくなってしまいますが、最後のページにこのような形で説明を掲載しております。よかったら読んでみてくださいね。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで、この第3回で終了です。
なんか他に思い出したらまた書くかも知れませんが、質問とかあればお気軽にTwitterのほうにでもくださーい。