わたなべまこのこと

断面図をこよなく愛するわたなべまこのブログ

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第2回)

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第2回)

かんきつだんめん図鑑が出来るまで。
これは第2回目の撮影の時のオフショットなんですが、2019年の2月頃だったんじゃないかなあ、と思います。この時も10品種以上をまとめて撮影したんじゃないかな。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第2回)

自分でデパ地下やアンテナショップをまわってかき集めた柑橘のほか、ご縁があってスタジオに直接柑橘農家さんから送りつけて貰った柑橘も…。わかりやすいように、直接柑橘に品種名を書き込んで下さってました(笑)。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第2回)

私の推し柑橘のうちのひとつ、甘平(かんぺい)です。
それまで、ずっと紅まどんなが一番美味しい柑橘!と思ってたんですけど(※あくまでも個人の好みです)、この甘平を食べてからはずっと甘平推し。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第2回)

あとはせとかとか…。
掲載したい柑橘リストにある品種を揃えた訳なんですが、まずは眺めて楽しんで頂けるように知名度の高い柑橘は割と優先的にかんきつだんめん図鑑に掲載するようにしました。個人的にはマニアックなかんきつだんめん図鑑も作ってみたかったのですが、読んでる人が楽しめないと意味がないのでね。
自分が知ってる品種とか掲載されてると、やっぱり嬉しくないですか?

紅まどんな、せとか、甘平あたりはここ数年でメディアへの露出も増えていて、フルーツが好きな方ならたぶんご存知の品種だろうなあ、というのが選抜した理由です。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第2回)

撮影の裏話をちょこっとしますが、こんな風に白背景で撮影した柑橘をデザイナーさんにくりぬいて貰ってます。なので、柑橘の下にあるような透明なブロックなどを駆使して、宙に浮いているような感じで撮影するんですけど、なかなかシュールです。
空飛ぶ柑橘(笑)。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第2回)

なるべくカワイイ姿をみなさんにお見せできるように、納得のいく断面図が現れるまで何度でも何個でも柑橘をカットしていきます。
この柑橘の場合は種がピコッと飛び出してしまったので、綿棒やつまようじなどを使って綺麗に取り除きました。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第2回)

こうして一度に並べてみると、やはり一言で「柑橘」といっても色んな色、形があるんだなあ…と改めて思いました。最初はそれほど意識していませんでしたが、この頃からかんきつだんめん図鑑は「橙色・黄色・緑色の3色を中心に、バランスよくカラフルに仕上げたいな」と思い始めます。
こんな感じで、撮影中に気づく事も多かったです。

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第2回)

金柑の断面図。
柑橘の断面図、撮影していて楽しかったのは種にまで個性がちゃんとあるところ。金柑の種って緑色なんですよ~(※品種により種なしもありますし、必ずしも緑色という訳ではないのですが)。すっごく可愛いくないですか?

かんきつだんめん図鑑が出来るまで(第2回)

そして、柑橘の撮影は実に半年以上もの時間をかけて行った訳なんですが、この頃になると緑色の柑橘も出回り始めます。
最初は柑橘=橙色(オレンジ色)で統一させよう、とか思ってた時期もあったんですが、今となっては緑色を入れて正解でした。

緑色の柑橘ってほとんどが香酸柑橘類なんですね。でも、例えば柚子のように時期が違えば外皮が黄色になって出回るものもある訳です。
さて、どちらの外皮の色で撮影すべきか?また、掲載すべきか?ここもすごく悩みました。柚子なんかは緑色、黄色、どちらも撮影したくらいです。

香酸柑橘類

これはたぶん第3回目の撮影の時のオフショットですね。
このあとは春先から初夏にかけて、遅く出回る晩成の柑橘を中心に撮影が進んでいきます。一度に何十種類もそろえる事が出来なくなってきたので、入手出来次第、都度撮影をするというスタイルに移行し、私も立ち会う機会がだんだん減っていきました。
代わりに撮影に立ち会って下さった担当者さんには感謝しかありません。

その間、私は何をしてたかというと掲載すべき柑橘リストを最終的にまとめたり、そのために各品種について調べものをしたり、農家さんに直接問い合わせをして情報を集めたり、なんて事をしていました。

*****

で、実はこの2019年の秋にはりんごだんめん図鑑が発売しているのですが、裏ではこんな風に同時進行ですでにかんきつだんめん図鑑の準備も進んでおりました。
りんご発売したー!作業終わったー!と思う暇もなく、すぐに次のかんきつだんめん図鑑に取り掛かっていたので、いちごからもうずっと図鑑とか断面図とか、いつも頭の中で考えてますみたいな状態だったのです。

なので、例えばりんごだんめん図鑑の告知をしたくても、ちょっと気を抜くとかんきつだんめん図鑑の情報を漏らしてしまいそうで、すっごい気を付けてたー(笑)。
コメントで「柑橘の図鑑を見たいです!」とか頂いてて、「今作ってるんだよ~」って何度言いたくなった事か(笑)。でも、それだけ希望されてる方がいるって事は、間違いないんだな、と確信できたので、本業のかたわら、寝る時間や休日を削ってでも作業を続ける事が出来たのでした。モチベーションは落ちなかったなあ。

あと、個人的な事情を少し話すと、りんごだんめん図鑑が出た頃にはすでに私は市場を離れていました。もともとデザイナーだし、私は青果物のプロではないので、市場を離れるという事もあり本当はりんごもかんきつも私が著者となって出版するのはお断りするつもりだったのです。市場には仲卸さんやセリ人さん、また全国には農家さんなど、その道のプロが沢山いらっしゃいます。なので、わざわざ私の名前で出さなくても…と思ってたんですよね。

でもまあ、そこから色んな人と長い時間をかけてお話しをさせて頂き、最終的にはこんな形で3冊もの図鑑を出す事が出来ました。いちごの時も思ったんですけど、まさか自分が本を出すとは思ってもいなかったので、本当に人生って何があるかわかんないよなあ、って今でも思ってます。